
大河『べらぼう』煙草の罠、謎だらけの死、白湯の意味…平賀源内(安田顕)の去りいく背中を惜しみつつ考察【後編】:3ページ目
白湯が与えたのは“死”なのか“温もり”なのか
一枚の遺稿を読み、源内の想いを知った意次が「だから言ったではないか」と無念の涙を浮かべるシーンは、冷たい仕打ちもすべて危険から遠ざけるためという真意が伝わり、思わず涙しました。
牢に訪れ「田沼意次はここにおる」と手を握ぎり抱きしめられた後、源内はどこかホッとしたような表情を浮かべていました。取り戻したかった意次との絆・信頼を再び手にできたからでしょうか。
「甘い煙草」を吸い出してから尋常ならぬ表情を浮かべていたものの、薬物の影響が抜けたのか、元の姿を取り戻したように見えました。ドラマでは「意次が牢を訪れてから一ヶ月ほど経った設定」だそうです。
牢獄の寒さに震えながらも「乾坤(あめつち)の手をちぢめたる氷かな」と一句詠む源内。いつもの知性を取り戻したようでした。
コトリと音がして、牢の床に何者かが置いた湯気の立つ白湯が入った腕。
源内が再始動することを恐れた何者かが毒を仕込んだのか、それとも意次による温もりの差し入れなのか。すっと腕に近寄った源内の姿のところで場面は終わりました。
筆者としては、笑みを浮かべた源内の表情を見ると「極寒の牢にいる身を慮り内緒で意次が温もりを差し入れてくれたのかも」と受け取ったように見えました。
気力を取り戻しかけたことを恐れた何者かが、寒さに震える源内に毒入りの白湯を差し出したと想像すると、非常に無念に感じます。
4ページ目 「非常の人」源内の生き様や偉業は現代にも引き継がれる