
大河『べらぼう』煙草の罠、謎だらけの死、白湯の意味…平賀源内(安田顕)の去りいく背中を惜しみつつ考察【後編】
才能に溢れ明るく、風のように時代を吹き抜けた自由人・平賀源内(安田顕)。
時代とともに、徐々にその輝きは光を失い精神的にも経済的にも追い込まれていきます。さらに、有力な後ろ盾だった田沼意次(渡辺謙)と決別し、精神の均衡が崩れ「甘い煙草」の罠に絡め取られてしまいました。
【前編】では、「べらぼう」16話「さらば源内、見立は蓬莱」で、“不吉の家”と悪評高い元・神山検校の家に引っ越し、大工の久五郎(齊藤友暁)に勧められるままに「甘い煙草」を常習し幻聴・幻視状態になった状態を、丈右衛門(矢野聖人)にはめられ久五郎殺しの罪で投獄されるところまでをご紹介しました。
※【前編】の記事↓
大河『べらぼう』煙草の罠、謎だらけの死、あの名セリフ…平賀源内(安田顕)の去りいく背中を惜しみつつ考察【前編】
【後編】では、決別したかのように思えた田沼との信頼関係を取り戻した源内の最後と、たとえ亡くなっても現代を生きる我々にも突き刺さった名セリフなどを振り返りたいと思います。
「甘い煙草」で何が夢で何が現かわからなくなった源内
天才・平賀源内の最期は諸説あります。一般的には、安永8年の11月20日の夜、源内宅で酒を飲んでいた丈右衛門と寿五郎は口論になり、源内が抜刀して両者に手傷を負わせ投獄された……という話が知られています。
ドラマでは、投獄された源内を心配し田沼意次(渡辺謙)が伝馬町牢屋敷を訪れます。源内は丈右衛門のこと、「田沼が回してくれた仕事」だと思った屋敷の図面のことを涙ながらに話をしますが、意次は「覚えがない」と。
源内は、幻聴や幻視に悩まされ挙句に覚えもないのに「人を殺した」として投獄されて、何が夢で何が現(うつつ)なのかわからなくなっている状態。そんな源内を落ち着かせるために「田沼意次はここにおる」と手を握ります。
決別した時「俺の口に戸は立てられませんぜ」と睨みつけた源内を嵌めたのは意次ではないか……とも感じる部分もありましたが、まさに意次が懸念していたのは、「毒殺の真相に気が付いた源内も松平武元(石坂浩二)同様に、殺される」ということだったのでしょう。けれども、すでに遅かったようです。