
朝ドラ「あんぱん」山寺宏一演じる座間晴斗にはモデルが!やなせたかしの恩師・杉山豊桔の生涯とは?
朝ドラ『あんぱん』では、主人公の浅田のぶ(池田愓がモデル)と柳井嵩(やなせたかしがモデル)が様々な試練に直面します。しかし同時に、二人は多くの人々と出会い、影響を受けて未来を切り開いていきます.
ドラマ中で。特にたかしに影響を与えたのが、山寺宏一さん演じる座間晴斗教授でした。実はこの座間教授、ちゃんとモデルがいたんです。
モデルとなった杉山豊桔(すぎやま とよき)は、東京高等工芸学校図案科(現・千葉大学工学部デザイン学科の源流)で教鞭を執り、漫画家やなせたかしをはじめ多くの若者に“型破りな自由”を授けた名教師です。
朝ドラ『あんぱん』に登場する座間晴斗のモデルとして近年再注目されていますが、実像はドラマの枠をはるかに超え、1930年代の日本デザイン界でバウハウス的モダニズムを標榜し、アジアの工芸研究にも踏み込んだ先駆者でした。
本稿では杉山豊桔がどういう人生を歩み、やなせたかしらと関わったのか、その軌跡をたどります。
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教壇に吹き込んだ“銀座の風”
杉山豊桔の生年は、詳細にはわかっていません。しかし彼自身も東京高等工芸学校を卒業しており、その後、母校に助教授として赴任したことは確かです。
豊桔は、入学早々の学生に朝ドラ『あんぱん』の座間のように、こう告げたと伝わります。
「図案科に入ったからといって将来は自由。デザイナーにならなくても、小説家でもタップダンサーでもいい」
この言葉通り、杉山は教室を飛び出し銀座の街へ学生を連れ出す授業を好みました。ネオンとショーウィンドーが放つ最新流行を観察し、「机上で学ぶより街で吸収せよ」という実地体験を通じて感性を磨かせたのです 。
当時の銀座はモダン文化の発信地でした。洋装店のポスター、カフェのメニュー、電飾広告と、すべてが生きた教材でした。
その刺激を受けた学生たちからは、のちに広告・装幀・漫画など各界で活躍するクリエイターが続出します。一斉授業より個別の対話を重んじる杉山のスタイルは、「自由研究」を謳う現在の美大ゼミにも通じるものがあります。
“ワッサン”に込めた自由の哲学
ドラマ中でも登場したのが「ワッサン」と口ずさむ歌です。
図案科には「ワッサワッサ ワッサリンノ モンチキリンノホイ…」と続く謎めいた“図案科の歌”がありました。先輩が後輩へ伝えるナンセンスソングで、歌い継ぐことで自由闊達な空気を共有したのです 。
杉山はこの歌を「意味は各自で翻訳してよい」と解釈させ、暗記より創意を優先しました。
学生の一人だったやなせは「歌そのものより“自由に意味を見つけろ”という先生の姿勢が衝撃だった」と後年回想しています 。
結果、図案科は服装規定すら緩やかな“紳士の学校”と呼ばれ、制服もネクタイも自己流アレンジを許されたと、後に語ってています 。
杉山が撒いた「自由」の種は、学生たちの表現欲を解き放ったのです。